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「女性が40歳以上の高齢カップル不妊治療はどうすればよいか」がreflections(意見/主張というほどの意味)としてFertil.Seril.2014;101:1574に掲載されている(執筆は米国ニューハンプシャー大)。

女性が
38−42才の154例の原因不明不妊に2周期のクロミフェン投与+AIH、FSH投与+AIH、IVFを無作為割り付けで2回ずつ実施して比較した結果を分析した結果、累積妊娠率はクロミフェン投与+AIHが21.6%、FSH投与+AIHが17.3%、最初からIVFを実施した場合には40.9%であった。
この研究で71.4%が妊娠し、46.1%が生児をえているが、
生児の84.2%はIVFによる妊娠であり、しかも、IVFによる妊娠は、他の方法よりも短期間で妊娠が成立した。
すなわち、
高齢(38−42才)の原因不明不妊女性ではIVFが第一選択となる、ということである。
この主張には皆さん方も異議はないと思うが、改めてデーターが示され、妥当性が支持されたことは記憶に留めておいてよい。
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Poor responderに対するGnRH antagonistの新しい投与法がFertil.Steril.2014;101:1308に報じられている。
@ 30例のpoor responderのうち21例を
GnRH antagonistを卵巣刺激開始前7日目より開始し、以前に行ったエストロゲン前処置GnRH antagonist周期と比較した。
A Dominant follicleの数は平均4.2個で、エストロゲン前処置の2.4個に比して有意に多かった。
B 卵を採取できた9例で比較すると、新しい方法では平均9.4日の卵巣刺激で卵が採取でき、エストロゲン前処置の平均11.1日に比して短かった。
C また、成熟卵の数は、新しい方法では平均4.9個、エストロゲン前処置では平均2.2個であった。
D ICSIの受精成功率は、新しい方法が86%、エストロゲン前処置では69%であった。
E 新しい方法によりETを実施した胚の数は平均2.8個、着床率は9.8%、臨床的妊娠率は23.8%であった。
この方法、試みる価値はありそうだ。
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クロミフェンにより子宮内膜が菲薄化した場合には妊娠の成立に影響があるか否かを検討したコホート研究結果がFertil.Steril.2013;100:1610に掲載されている。
@ 2005-2012年の間のクロミフェン投与162例の562周期に経膣超音波による子宮内膜の厚さの計測を行った。
A 362周期にday9にgonadotoropin投与を行った。
B 91妊娠が成立した(周期あたりの妊娠率は16.2%)。
C
妊娠率は、子宮内膜の厚さが6mm未満では14.8%、6-9mmでは16.3%、9mm以上では19.0%で、子宮内膜の厚さによる差はなかった。
D クロミフェン単独とgonadotropinの追加投与による子宮内膜の厚さは、それぞれ6.8mmと6.7mmで差はなかった。
E 妊娠が成立した周期としなかった周期の子宮内膜の厚さは、それぞれ6.9mmと6.8mmで差はなかった。
クロミフェン投与では、排卵前期のE2レベルと子宮内膜の厚さには相関がなかった。
クロミフェンによる子宮内膜の菲薄化を懸念して、他の方法へ移行する場合には子宮内膜の厚さを指標とすることはできない、としている。
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内膜症性嚢胞の存在は卵の質には影響しないという報告がFertil.Steril.2014;101:988に掲載されている。
@ 片側に無処置の内膜症性嚢胞(EC)が存在していて、体外受精プログラムを行った29例を対象とし、患側と正常側とを比較した。
A 平均成熟卵胞数はECが3.7個、対照が4.1個であった。
B 回収した卵の平均数はECが4.2個、対照が4.7個であった。
C 成熟度が良い卵の数はECが3.1個、対照が3.5個であった。
D 良好胚の平均数はECでは1.8個、対照でも1.8個で差はなかった。
E 妊娠率はともに64%で、差はなかった。
以上から、この論文では、内膜症性嚢胞の存在は卵の質や着床率に影響しないことが判明したとしている。
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卵・胚の提供を受けた44才以上の女性の妊娠予後についての報告がFertil.Steril.2014;101:1331に報じられている。
@ 2008-2010年の間の5つの報告をまとめたコホート研究で、34才以下、35-39才、40-44才、45才‐49才、50才以上に分けて検討している。
A 40‐44才では、39以下と比べて着床率・妊娠率・生産率などに差はなかった。
B
45才以上では着床率・妊娠率・生産率が低下し、さらに50才を超えると著しい低下が観られた。
通常、自分の卵を用いてARTを実施しても44才以上では妊娠率は極めて低いことが知られているが、ドナーの卵を用いても妊娠率などが低下するということは、卵の老化だけでは説明できないということになる。

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新鮮胚の移植よりガラス化凍結胚(胞胚)を1個移植したほうが生産率が良いとする報告がFertil.Steril.2014;101:1294に掲載されている。
@ 1157回の新鮮胚と645回の凍結胚1個の移植を比較した。
A 解凍した凍結胚の生存率は94.4%で、新鮮胚との差はなかった。
B 全体の生産率は凍結胚が55.3%、新鮮胚が52.8%であった。
C 児は凍結胚が145g体重が重く(3441gvs3296g)、在胎期間が0.3週長かった。

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流産児の染色体分析をおこなう場合に、母体細胞の混入を考慮するとどうなるかを検討した結果がFertil.Fertil.2014;101:178に掲載されている。
@ 1222例の流産排出物の検討をsingle-nucleotide polymorphism (SNP) microarray 法で行った。
A 1222例中、592例に染色体異常が観られ(48%)、正常の46XXが456例、正常の46XYが178例観られた。
B 456例の46XXのうちの269例では母体由来の染色体のみで、胎児由来は観られなかった。
C
母体由来を除外すると、流産例における染色体異常は48%から62%に上昇し、XXとXYの比は2.6から1.0へと低下した。
すなわち、自然流産例では児の染色体異常が2/3を占める、その性比は1に近く、
男児の流産が多いとする従来の説が否定される。
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IVFの際の黄体支持療法として、黄体ホルモンの皮下投与と膣内投与とを無作為割り付けにより比較した報告がFertil.Steri.2014;101:112に掲載されている。
@ 欧州内の13機関で行った共同研究で、連日25mg皮下投与群が339例、連日 8%ゲル90mgの膣内投与群が344例であった。
A 黄体ホルモン投与は採卵当日から開始し10週間継続した。
B 投与開始後10週間目でのon-going妊娠率は、皮下投与群が27.4%、膣内投与群が30.5%で有意差はなかった。
C 生産率は皮下投与群が26.8%、膣内投与群が29.9%で有意差はなかった。
すなわち、
皮下投与と膣内投与には臨床的差は観られないということだが、簡便性と患者に与える疼痛や注射後の硬結などを考えると、膣内投与の方が有益だろう。
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原因不明不妊カップルにICSIを実施すると妊娠が成立するというメタアナリシスの結果がFertil.Steril.2013;2013;100:704に掲載されている。
@ 1992-2012年の間の女性年齢が30-35才の901例(11767卵)の原因不明不妊カップルの分析結果である。
A
ICSI によって受精が成立する割合は、従来の媒精法の1.49倍であった。
B
ICSI を行うことによる受精不成功の阻止(成功の可能性)は、8.22倍となると計算された。
臨床的妊娠に対する効果は不明で、これからの検討事項とされているが、原因不明の不妊に対する1つのアプローチと考えてよかろう。
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Poor responderの卵巣刺激に、GnRH analogのlong とshot protocolのいずれが有効かを検討した報告がFertil.Steril.2014;101:147に掲載されている。
@ エジプトでの研究で、111例を、いずれかに無作為に割り付け行った。
A 採卵数は、longが平均4.42個、shortが2.71個で、有意にlongが多かった。
B Agonistのlongとantagonistを比べると、antagonistも4.42個で差はなかった。
C On-going妊娠率は、long、shortともに8.1%であったが、antagonistでは16.2%であった。
Poor responderの卵巣刺激には、longまたはantagonistが適当であると結論された。
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                                                             医学博士 森 宏之